あらすじ
第12話は、紀若塵が個人の感情と三界の責任の間で苦しい選択を迫られる物語です。彼は三界の平和を安定させると予言された人物ですが、残された寿命はわずかです。景宵真人を救うため、紀若塵は顧清との結婚を承諾せざるを得なくなりますが、同時に顧清と謫仙の間にある運命の縁を隠してしまいます。
一方、何も知らない張殷殷は紀若塵への想いを胸に帰郷しますが、そこで紀若塵が他の人と結婚しようとしている場面に遭遇し、深い悲しみに暮れ、婚礼の場で大暴れします。そして最終的に、紀若塵との縁を切ることを決意します。
紀若塵は重要な局面で張殷殷を守り、婚礼を放棄することを選びます。紫微師匠の不満をよそに、去っていく張殷殷を追い求めるのでした。婚礼の場に戻った紀若塵は、顧清の問いかけに深い罪悪感を抱き、二人の女性を傷つけてしまったことを悟ります。
ネタバレ
紀若塵は驚愕した。全ては運命の糸に操られていたのだ。花娘も三界を襲う大劫について語り、紀若塵こそが三界の安寧をもたらす唯一の存在だと予言していた。師である紫微真人からも同じ言葉を聞き、凶命大法を修練し、余命いくばくもないと悟る紀若塵は、その重責に慄いていた。彼は紫微真人に対し、真の谪仙である吟風を推薦するが、紫微真人はある人物に会うよう指示する。その人物に会えば、自ずと答えがわかると。
紫微真人は紀若塵を景宵真人の元へ連れて行った。張殷殷の両親が紀若塵を救った際に、景宵真人は大妖の石化大法を受け、今わの際であった。紫微真人は、雲中居に伝わる千年の秘術を習得すれば景宵真人を救えると告げる。そして、その秘術を学ぶには顧清と結婚する必要があるという。さらに、顧清と谪仙の縁組は天命であり、顧清と結婚することで、その秘密は永遠に守られるのだ。
いずれにせよ顧清と結婚することになるが、紀若塵は張殷殷と心に誓い合っていた。顧清に申し訳ないと感じる紀若塵に対し、紫微真人は、顧清は紀若塵を救うために仙人の法相を捨て、自ら人間になったのだと告げる。それは顧清にとっても大きな犠牲だった。景宵真人の傍らにいた張殷殷の母は、娘のために結婚を承諾してほしいと紀若塵に懇願する。張殷殷には父が必要なのだ。もはや抗えないと悟った紀若塵は、涙ながらに結婚を受け入れた。
一方、無尽海から戻った張殷殷は、紀若塵との再会に胸を躍らせ、青衣と共に近くの廟会を訪れていた。そこで偶然、西玄で紀若塵と人間の娘の婚礼が行われるという話を耳にする。紀若塵は生きて戻れたら西玄で盛大な婚礼を挙げると約束していた。自分がその花嫁だと確信する張殷殷は、青衣と共に西玄へと急いだ。
婚礼当日、華やかな衣装を身に纏う顧清とは対照的に、紀若塵は沈痛な面持ちだった。無尽海で待つ張殷殷を思い、胸が締め付けられる。
西玄に到著した張殷殷は、紀若塵が顧清と結婚すると知り、逆上する。雲中居の弟子たちを剣で蹴散らし、紅色の装飾に彩られた会場に踏み込み、婚礼を阻止しようとする。五尾の妖狐が剣を手に婚礼を妨害する姿に、周囲は騒然となる。張殷殷の姿を見た紀若塵の目は赤く染まった。自ら望まぬ婚礼、目の前にいる最愛の人、そして抑えきれない罪悪感に苛まれる。
張殷殷は紀若塵に、どちらを選ぶのかと問いただす。しかし、紀若塵は何も答えない。絶望した張殷殷は、紀若塵から贈られた索妖镯を断ち切り、二人の縁を完全に断つことを誓い、その場を去った。列席者たちは妖狐を野放しにするわけにはいかず、妖丹を狙って襲いかかる。紀若塵は張殷殷を庇い、逃げる手助けをする。紀若塵の行動に激怒した紫微真人は、婚礼に戻るよう迫るが、紀若塵は拒否し、顧清の手を振り払い、張殷殷の後を追った。紫微真人は婚礼を延期とし、日を改めて行うことを宣言した。
一日中探し回ったが、張殷殷は見つからない。失意の紀若塵が婚礼会場に戻ると、深夜になっていた。昼間の賑やかさは消え失せ、荒涼とした空気が漂う。赤い絨毯の上の鳳冠、そして背を向ける顧清。足音を聞き、顧清は紀若塵に、なぜ戻ってきたのか、なぜ結婚を承諾したのかと問いかける。顧清の虚ろな瞳を見つめ、紀若塵はまた一人、女性を傷つけてしまったことを悟った。
第12話の感想
「塵縁<じんえん>~Destiny Lovers~」第12話は、まさに怒涛の展開でした。紀若塵の苦悩、張殷殷の絶望、顧清の悲しみ、それぞれの感情が激しくぶつかり合い、見ているこちらも胸が締め付けられるようでした。
三界の安寧を背負うという重責、愛する者を守るための犠牲、そして運命のいたずら。紀若塵は、どれを選んでも誰かを傷つけてしまうという残酷な状況に追い込まれます。師の言葉に従い、大義のために顧清と結婚することを選ぶも、心は張殷殷への愛で溢れている。その葛藤が痛いほど伝わってきました。
特に印象的だったのは、婚礼の場で張殷殷が索妖镯を断ち切るシーンです。紀若塵からの贈り物であり、二人の愛の証でもあったあの镯を、自らの手で壊す張殷殷の悲しみと決意。彼女の叫びが、まるで自分のことのように心に響きました。
つづく