あらすじ
第32話は、吟風が顧青を守るため紀若塵の緻命的な一撃を受け止め、息を引き取る間際に自身の仙人法相を顧青に託す場面から始まります。顧青は深い悲しみに暮れ、魔性に染まった紀若塵に対し、二度と会うことはないと誓います。
一方、李玄真は西玄からの脱出を試みる中で、謎めいた侠客と偶然出会います。そして不思議な縁によってその侠客の弟子に選ばれますが、西玄を離れないこと、そして紫陽師匠を悪く言わないことが条件でした。
張殷殷は紀若塵の記憶が曖昧なままですが、彼との強い繋がりを感じています。紀若塵は彼女が幸せに生きていくことを願っています。
孫果は地獄の神の任務を果たせませんでしたが、仙雲魄を手に入れたことで決意を新たにします。
張殷殷の記憶の束縛を解こうと考えた紀若塵は、嗜情尊者を探し出し、過去の取引を解消しようとします。そこで、無尽海の水を全てなくせば彼女の記憶が戻ると知り、すぐさま無尽海へ向かいますが、青衣たちに阻まれてしまいます。
ネタバレ
吟風は顧青を守るため紀若塵の前に立ちはだかり、掌撃を受け重傷を負う。もはや紀若塵に敵わないと悟った吟風は、最期に自身の仙人の法相を顧青に渡して息絶えた。吟風を失った顧青は深い悲しみに暮れ、紀若塵に自分を殺すよう懇願する。青い炎を瞳に宿し、完全に正気を失った紀若塵。その時、張殷殷が紀若塵の手首を掴み、顧青が紀若塵のために尽くしてきたこと、雲中居が彼女の父の命を救ったことを必死に訴える。恩を忘れてはならないと叫んだ張殷殷は気を失い、紀若塵は重傷の張殷殷を抱えてその場を去る。生死の境を彷徨う吟風を腕に抱き、顧青は紀若塵とは二度と会わないと誓うのであった。
一方、李玄真は西玄の脱出を助ける途中、謎の侠客と遭遇する。仮面で顔を隠したその侠客は、李玄真以上に深い傷跡を負っているようだった。不思議な縁で結ばれた二人は、侠客が李玄真に弟子入りを迫る展開に。何度も逃げようとする李玄真だったが、その侠客が数多の人々がその名を知るのみで真の姿を見たことのない「鎮山之秘」であることを知る。師に選ばれた李玄真は、西玄を離れることを強要せず、紫陽師匠の悪口を言わなければ弟子になると条件を出す。
紀若塵は張殷殷のために奔走し、彼女を唯一幸せな思い出のある場所に連れて行き、治療に専念する。見覚えのある場所に触れ、記憶が呼び起こされるたびに激しい頭痛に襲われる張殷殷は、紀若塵に以前会ったことがあるのか、なぜ彼に会うと懐かしさを感じるのかと問う。紀若塵は静かに彼女の布団を掛け直し、過去の記憶を取り戻すかどうかはもはや重要ではない、ただ彼女がこれから毎日幸せに過ごせることを願うと告げる。
地獄之神から与えられた任務に失敗した孫果は、落胆しながらも紀若塵が魔に堕ちたことを報告する。もはや勝ち目は無いと嘆く孫果に対し、地獄之神は新たな忠実な傀儡を求めていた。孫果に更なる忠誠を誓わせるため、地獄之神はかつて吟風が顧青のために苦労して手に入れた仙雲魄を与える。これにより、孫果も仙人同様に長生を得ることになる。地獄之神からの褒美を得た孫果は、より一層悪事に手を染めていく。
張殷殷が記憶の断片に触れるたびに頭痛に苦しむのを見るに見かねて、紀若塵は嗜情尊者の元を訪れ、過去の取引を解消しようと決意する。女媧涙を使ってしまった今、嗜情尊者が応じてくれるかどうか、張殷殷は不安を抱く。
補天涯を訪れた二人に、嗜情尊者は一度成立した取引は覆せないと言い放つ。かつて紀若塵は神州気運図で、霊穴が破壊されたにも関わらず仙気が漂っているのを見て、妖禁の念力によるものだと推測していた。補天涯の破壊を企む紀若塵に対し、嗜情尊者は無尽海の水を全てなくせば張殷殷の記憶は戻るだろうと告げる。
一縷の望みに賭け、紀若塵は無尽海へ向かう。彼の来訪を聞きつけた青衣と無尽海の弟子たちは、紀若塵の前に立ち塞がるのであった。
第32話の感想
第32話は、様々な登場人物の運命が大きく揺れ動く、非常にドラマチックな展開でした。特に印象的なのは、愛する顧青を守るため、自らの命を投げ出した吟風の自己犠牲です。紀若塵の暴走を止めようとする張殷殷の必死の訴えも胸を打ちます。記憶を失いながらも、紀若塵に不思議な親近感を抱く張殷殷の姿は、切なくも美しい。紀若塵は、魔に堕ちながらも、張殷殷の幸せを願うという、複雑な感情を抱えています。二人の関係性の変化、そして記憶を取り戻す鍵となる無尽海での対決など、今後の展開に期待が高まります。
李玄真と謎の侠客、鎮山之秘との出会いは、物語に新たな風を吹き込んでいます。飄々とした李玄真と、謎めいた侠客のやり取りは、緊迫した状況の中でもどこかコミカルで、良いアクセントになっています。
つづく