あらすじ

第五十七話は、高湛こうたん陸貞りくていの愛の物語と、彼らが直面する試練を中心に展開します。

高湛こうたん陸貞りくていを皇后に立てようと考えていますが、朝廷内部と陳国からの圧力に直面しています。張相ちょうそう陸貞りくていの冊封に仮対し、陳文帝ちんぶんていは二国間の関係を強化するために高湛こうたん同昌公主どうしょうこうしゅとの結婚を要求しています。

こうした状況にも関わらず、高湛こうたん は鮮卑のしきたりに従って陸貞りくていを妻に娶ると断固として表明し、既に陸貞りくていと結婚していることを明かします。越国夫人えっこくふじんの脅しや陳国の条件にも屈することなく、高湛こうたん陸貞りくていへの深い愛情を示します。

しかし、物語は佳境を迎え、高湛こうたん の頭痛が悪化し、発狂の症状が現れ始めます。そして、彼の服用している霊薬に五石散の成分が含まれていることが判明し、これが病状を悪化させている原因だと分かります。陸貞りくていはこの事実を隠蔽し、解毒剤を探し始め、今後の展開への不安を高めます。

ネタバレ

陸貞りくてい高湛こうたん に魏国からの脱出劇を尋ね、沈碧しんへきの犠牲を知る。高湛こうたん は翌日の冊封式で陸貞りくていを皇后にすると宣言する。

しかし、張相ちょうそうは先皇后が陸貞りくていを先帝の妃嬪に封じたことを理由に仮対。悩む高湛こうたん元禄げんろくは陳国からの霊薬を差し出す。陸貞りくてい丹娘たんじょうを訪ね、司膳を任されたことを伝え、そこへ元禄げんろくも点心を持って現れる。

高湛こうたん は剣術の稽古に励む。陸貞りくていは宣旨を聞いて不安を吐露するが、高湛こうたん は鮮卑の風習で寡嫂を娶ることができると言って皇后にすると約束する。喜ぶ陸貞りくていだが、高湛こうたん は突然頭痛に襲われる。

霊薬を服用し回復した高湛こうたん だが、忠叔ちゅうしゅくは発作の頻度が増えていることを心配する。陸貞りくていは霊薬を疑い、太医たいい院に検査を命じる。そこへ韋将軍いしょうぐんが現れ、陳文帝ちんぶんていからの第三の条件を伝える。

陳国からの贈り物と共に、第三の条件、すなわち同盟強化のため同昌公主どうしょうこうしゅ高湛こうたん が娶ることが告げられる。高湛こうたん陸貞りくていは衝撃を受ける。

張相ちょうそうはこの縁談に賛成するが、高湛こうたん は三ヶ月後に鮮卑の風習に従い陸貞りくていを娶ると宣言。沈嘉彥しんかげんはこれを称賛し、高湛こうたん は既に陸貞りくていと婚礼を挙げ、家係図にも記されていると明かす。

陳国に貸し出した三万の兵が京郊にいる状況で、高湛こうたん は天下を裏切っても陸貞りくていを裏切らないと断言。屏風の後ろで聞いていた陸貞りくていは涙する。

越国夫人えっこくふじん同昌公主どうしょうこうしゅを嘉福殿から含光殿に移すよう求めるが、高湛こうたん陸貞りくていが正妻だと明言。越国夫人えっこくふじんの脅しにも屈せず、開戦も辞さない構えを見せる。越国夫人えっこくふじんは三日後には高湛こうたん の気が変わると言い放ち、住居の手配を求める。

杜衡とこう陸貞りくてい同昌公主どうしょうこうしゅ越国夫人えっこくふじんの素性を説明し、忠叔ちゅうしゅく陳文帝ちんぶんていへの手紙が送られたことを伝える。高湛こうたん は再び頭痛を起こし、忠叔ちゅうしゅくは急いで霊薬を持ってくる。越国夫人えっこくふじん同昌公主どうしょうこうしゅを守ろうと決意する。

高湛こうたん陸貞りくていは柔然の曲を歌いながら過ごす。その時、宮女が駆け込み、高湛こうたん が霊薬を二錠飲んでも効かず、発狂したと報告する。「婁氏ろうしめ、命をよこせ!」と叫びながら剣を振り回す高湛こうたん を、陸貞りくていは平手打ちして落ち著かせる。

忠叔ちゅうしゅくは霊薬に五石散が含まれており、常用すると中毒を起こすと説明する。陸貞りくていは情報を封鎖し、太医たいい院に解毒剤の開発を命じる。物語は緊迫した状況で幕を閉じ、今後の展開に期待が高まる。

第57話の感想

第57話は、高湛こうたん陸貞りくていの愛の強さと、迫りくる危機が鮮明に描かれた、息詰まる展開でした。高湛こうたん は、沈碧しんへきの犠牲、張相ちょうそうの仮対、そして陳国からの圧力という三重の苦境に立たされながらも、陸貞りくていへの愛を貫き通そうとする姿が印象的です。特に、鮮卑の風習を持ち出し、どんな困難があっても陸貞りくていを皇后にするという決意表明は、彼の深い愛情を物語っています。

しかし、その強い意誌とは裏腹に、高湛こうたん の身体は病魔に蝕まれていきます。霊薬への依存が深まり、発作の頻度が増していく様子は、見ている側にも不安を与えます。陳国からの贈り物、そして同昌公主どうしょうこうしゅとの政略結婚という新たな問題も浮上し、二人の未来はさらに不透明なものとなりました。

陸貞りくていもまた、高湛こうたん の病状悪化、そして迫りくる政治的陰謀に立ち向かう強い女性として描かれています。彼女は冷静に状況を分析し、霊薬の問題にいち早く気づき、太医たいい院に調査を命じるなど、知性と行動力を発揮します。高湛こうたん を支え、共に困難を乗り越えようとする彼女の姿は、まさに理想の皇后像と言えるでしょう。

つづく