あらすじ
第五十八話は、越国夫人が陸貞に長広王・高湛 に同昌公主を皇后に立てるよう説得してほしいと頼み、脅迫する場面から始まります。越国夫人の要求と脅しに、陸貞は非常に苦悩しますが、最終的には大局を考えて高湛 に手紙を書きます。その手紙には、自分が身を引くことでこの話がまとまるならそうしたいという彼女の意思が記されていました。
手紙を受け取った高湛 は悲しみに暮れますが、国の安定のため、同昌公主を皇后に迎えることを決意します。しかし、婚礼の夜、同昌公主が実は痴呆の女性であることが明らかになります。
三年後、高湛 は依然として陸貞を想い続けており、彼女が西域へ行ったことを知ります。彼が陸貞を恋しく思っていたその時、彼女は突然宮廷に戻ってきます。二人は再会を果たし、二度と離れないことを誓い合います。
高湛 は陸貞を宮廷に連れ戻り、彼女のあらゆる決断を支持し、彼女を一品女侍中に封じ、大斉の農商務を統括させます。物語の最後は、陸貞と高湛 の波乱万丈の人生と、陸貞が国に尽くした功績を振り返る形で幕を閉じます。
ネタバレ
越国夫人は陸貞を屋敷に招き、長広王・高湛 に同昌公主を皇后に立てるよう説得してほしいと頼む。女官の立場では皇帝の決定に口出しできないと困惑する陸貞に対し、夫人は祭天の儀で高湛 が陸貞の手を取り百官に披露した出来事を持ち出す。ならば何故無理に公主を嫁がせたのか、皇帝が陸貞だけを寵愛する可能性を考えなかったのかと陸貞は問う。夫人は公主の美貌を自信とし、皇帝は必ず寵愛するだろうと答える。
さらに陸貞は、毒を使ってまで嫁ぐことが公主の身分に相応しいのかと追及する。すると夫人は、子を産めない女が女と言えるのかと辛辣に仮論し、公主は子を産めない妃を嫉妬するはずがないから恨みを抱くこともないと続ける。そして、陸貞が城壁から落ちた後、高湛 が彼女に至陰の薬を飲ませたため、二度と子を産めない体になったという衝撃の事実を明かす。陸貞は否定するが、夫人は同昌公主を皇后にしないと陳国が攻めてくる上、皇帝も毒で発狂し国が混乱に陥ると脅迫する。
陸貞は高湛 に騙されていたのかと疑念を抱き、元禄に子を産めたら嬉しいかと尋ねる。元禄は皇帝は小緯を可愛がっているが、自分の子を授かればもっと喜ぶだろうと答える。その後、陸貞は高湛 に、太医が五石散の毒を徐々に解毒する薬を見つけ、半年ほどで効果が現れると伝える。
越国夫人の脅迫に屈した陸貞は、高湛 を説得することを決意する。瑠璃に翌晩、皇帝に喜服を渡すよう指示し、小緯を訪ねる。瑠璃が陸貞を探すと、皇帝への手紙が見つかる。手紙には同昌公主を皇后に立てなければ二度と会わないと書かれており、悲しみに暮れた皇帝は吐血する。
陸貞を送り届ける沈嘉彥は一緒に来るように誘うが、陸貞は高湛 だけが自分の夫だと断る。宮中では、高湛 が同昌公主を皇后に立てるよう勅命を出す。張相は先帝の喪が明けていないことを理由に仮対するが、皇帝は激怒し、異議を唱える者は斬首すると宣言する。瑠璃は慰めようとするが、高湛 は民のために陸貞の言葉に従うしかないと嘆く。
婚礼の夜、高湛 が公主の蓋頭を取ると、彼女は痴呆であることが判明する。越国夫人は土下座して真実を語る。高湛 は陸貞が作った喜服を抱きしめながら夜を過ごす。三年後、皇后はまだ幼子のように振る舞い、陸貞のことを尋ねる。高湛 は疲れたら戻ってくると慰める。大臣から官窯と織染署の不振を報告された高湛 は倒れてしまう。
沈嘉彥は高湛 に、陸貞が西域へ行き、いつ戻るかわからないと伝える。高湛 は彼女が必ず戻ると信じ、一生待つ覚悟を決める。沈嘉彥は、陸貞はそんなに待たせないだろうと告げる。陸貞は沈嘉彥からの手紙で高湛 の病状を知り、急いで戻ろうとする。出発しようとした時、高湛 が門前に立っているのを見つけ、二人は抱き合う。
高湛 は陸貞を宮中に連れ戻し、陸貞は二度と離れないと誓う。高湛 は死ぬまで手を離さないと語り、陸貞も同じ気持ちだと答える。陳文帝が亡くなったため、高湛 はすぐに陸貞を皇后に立てようとするが、陸貞は無実の同昌公主を思い、女官として官窯と織染署を再び管理したいと申し出る。高湛 は彼女のどんな決断も支持する。
朝廷で、高湛 は陸貞を一品女侍中に任命し、大斉の農商を統括させる。彼は陸貞の手を取り、天下を治めるには二人の力が必要だと語る。河清四年、高湛 は持病が悪化し太子に譲位し、陸貞に補佐を命じる。三年後、高湛 は乾寿堂で崩御する。再び選秀の季節が巡り、陸貞は自分の老いを感じながら高湛 との日々を回想する。十五年後、陸貞が亡くなる。鄴都宮殿は朽ち果てていたが、人々は陸貞という少女が自らの手で宮殿の扉を開き、伝説を築いたことを語り継いでいた。
第58話の感想
「後宮の涙」第58話は、波乱万丈の宮廷生活を送ってきた陸貞と高湛 の愛の物語がついに完結を迎える、感動的なエピソードでした。越国夫人の策略や、高湛 の病、そして陸貞の決断など、様々な困難が二人を襲いますが、最終的に二人は強い絆で結ばれ、深い愛情を確認し合う姿に胸を打たれました。
特に印象的だったのは、陸貞が国と高湛 の未来を守るため、自ら身を引く決断をしたシーンです。高湛 への愛と、国への責任感の間で葛藤する陸貞の姿は、彼女の芯の強さと優しさを改めて感じさせました。また、高湛 が陸貞への変わらぬ愛を貫き、彼女を信じて待ち続ける姿も非常に感動的でした。たとえ離れていても、二人の心は繋がっていることを実感させられる、美しいシーンでした。
同昌公主の件は、物語に複雑な要素を加えていました。彼女の存在は、陸貞と高湛 の関係に試練をもたらしましたが、同時に、高湛 の人間としての成長も描かれていました。最終的に、陸貞と高湛 が再会し、共に国を治める道を選んだことは、大きな希望を感じさせました。
しかし、高湛 の死はあまりにも突然で、悲しみがこみ上げてきました。陸貞がその後も国のために尽力し、高湛 の遺誌を継いでいく姿は、彼女の強さと愛情の深さを改めて示していました。二人の物語は幕を閉じましたが、陸貞が残した功績と、二人の愛の物語は、人々の心に永遠に刻まれることでしょう。