黒羽隊は、夫人から偵察を命じられた二人の兵士を捕らえる。彼らは夫人から、三日後に盗掘者たちを誅殺する命令を受けており、丁雲斉以外の者は盗掘者の名目で排除するよう指示されていた。楚風鈴は自分が夫人に捨て駒にされたことを知り、これまでの努力が無意味だったと絶望し、自害しようとする。しかし、無双が彼女の銃を奪い、彼女の命は賀彪が命をかけて救ったものであり、無駄にするなと叱責する。
丁雲斉は捕らえた兵士を通じ、夫人に三日後に昆崙墟を開くと伝える。もし夫人がそれまでに妨害するなら、昆崙墟を破壊すると警告する。
一方、周裘海らは森の中で于家の兄妹に出会う。周裘海は彼らの素性を知らないが、丁雲斉と連絡を取っていることから、昆崙墟に関係していると推測する。于家の兄妹は優れた軽功で逃げ出し、周裘海らを洞窟に誘い込むが、周裘海は彼らの相手ではなく、難なく脱出する。
周裘海は、先ほどの洞窟が昆崙墟の近くにあると推測し、部下に他の仲間たちに場所を変えるよう指示し、行方をくらます。
于家の兄妹は周裘海と遭遇したことを丁雲斉に報告する。聡明な丁雲斉は、周裘海が既に昆崙墟の入り口を知っている可能性があると推測する。于十七は、自分たちだけでは周裘海や夫人の軍隊に対抗できないと悟り、丁雲斉に天官総壇へ行くよう説得する。そこが唯一の避難場所だと考える。
賀彪が意識を取り戻すが、足の感覚を失ってしまう。楚風鈴は賀彪を治療するため、彼を連れて行くことを決意し、治療の機会を逃すまいとする。多くの経験を経て、楚風鈴は成長し、心の執著を捨て、今はただ賀彪の世話をしたいと考えている。もし賀彪に後遺症が残れば、彼の後半生を支えると決意する。
皆が楚風鈴を見送った後、無双は一人で周裘海に会いに行くことを決める。今後、彼らは敵同士となる。彼女は川辺で合図の狼煙を上げ、周裘海が現れる。
無双は幼い頃から周裘海に育てられ、彼らの間には深い憎しみがあるものの、周裘海の正体を知るまでは彼を父親のように慕っていた。周裘海が寿無疆の一家を殺害したのは、五門の長は結婚できないという規則を破り、寿無疆が外で妻子を持ったため、門戸を清めるためだった。その後、偶然にも無双は周裘海の手中に落ち、彼は無双を餌として利用する。長年、寿無疆は姿を現さなかったため、周裘海は無双を利用して天官の後継者に近づき、天官の秘密と昆崙墟の場所を知ろうとした。
無双は周裘海を師匠と認めるが、天龍は仇だと主張する。数日前、周裘海は天龍に殺され、この世を去ったと言う。この言葉に周裘海は激怒し、師弟の道が分かれる日が来るとは思わなかった。何を言っても過去には戻れない。無双は去り際に周裘海に、次に会う時は天龍が死に、自分が生き残るという結果しかないと言い放つ。
周裘海は無双に情を抱いているが、彼にとって最も重要なのは昆崙墟である。師弟の縁が尽きた以上、引き止める必要はないと考える。
丁雲斉は于十七に跪拝する。五門は既に解散し、于氏一族も自由になるべきだと考える。丁雲斉は夫人が軍隊を派遣して攻撃してくることを知っているため、于十七に一族を率いてここを離れるよう望む。五門が解散した以上、彼らは門規を守る必要はなく、総壇の門を守る必要もない。罪のない人々が、過去の規則や昆崙墟のために犠牲になる必要はない。彼らは外の世界を見て、平穏な生活を送るべきだと説く。
第35話の感想
「天官の継承者 ディン・ユンチー ~秘宝と愛の物語~」第35話は、物語が大きく動く転換点となる回でした。楚風鈴が夫人に捨てられたことを知り自害を図るシーンは、彼女の絶望と苦悩が痛いほど伝わってきて胸が締め付けられました。しかし、無双の叱咤と賀彪の存在が、彼女に新たな生きる道を示し、成長を促す姿に感動しました。
丁雲斉が夫人に対して昆崙墟を巡る駆け引きを仕掛ける場面は、緊張感があり、今後の展開への期待を高めます。周裘海と于家兄妹の対峙、そして無双と周裘海の決別など、それぞれのキャラクターの思惑が交錯し、物語はさらに複雑さを増していきます。
特に、無双が周裘海に対して抱く複雑な感情と、それでもなお自分の正義を貫こうとする決意は、見ている者の心を強く打ちます。師弟関係の終焉は悲しいですが、彼女の選んだ道を見届けたいと思わせます。
つづく