裴琰、衛昭、崔亮、江慈は、一台の馬車で南霊へ向かう。道中、江慈は手作りの菓子を皆に振る舞った。易飛と童敏は馬で一行に同行し、皆はすぐに打ち解け、話が弾んだ。一行は昼夜を問わず進み、ようやく南霊の以講に到著、そこから小舟に乗り換えた。南霊は風光明媚な場所だったが、衛昭と裴琰は軍械事件の調査に集中しており、景色を楽しむ余裕はなかった。江慈は漁師の娘・阿顔の舟漕ぎを手伝い、自分の外套を彼女に貸して暖を取らせた。
長い旅の末、一行は裴琰の実家である長風塢に到著した。阿顔は江慈に外套を返し、感謝の言葉を述べた。裴琰は帰宅後、すぐに盛大な宴を開き、裴氏一族をもてなした。しかし、族長の裴子放は裴琰を冷やかし、ある女性のために裴氏の名を汚したと非難した。江慈は裴琰の立場を気遣い、席を外したいと申し出る。衛昭は裴琰を庇い、族人たちを厳しく叱責した。裴子放は衛昭が謝澈の側近であることを知っていたため、謝罪せざるを得なかった。しかし、衛昭は納得せず、さらに厳しく彼らを叱りつけた。
江慈がひそかに宴を抜け出すと、崔亮が後を追った。江慈は粥に寒性の君子蘭を入れ、使用人に裴琰には飲ませないよう指示した。裴子放たちに下痢を起こさせるためだった。崔亮は江慈を街に連れ出し、そこで気に入った巾著袋を購入した。江慈は粥屋で衛昭と出会い、彼が粥に大量の砂糖を入れているのを目撃する。衛昭は江慈に長風衛の密書に使われる暗号帳の調査を依頼するが、江慈は断る。衛昭はわざと月落城には苦くない粥を作る霊柩花があると漏らし、江慈は店の主人が古い米を使っていることに気づく。
江慈が粥に君子蘭を入れたため、裴子放と族人たちはひどい下痢に苦しみ、それぞれ帰宅した。裴琰は何かおかしいと感じ、童敏に調査を命じる。衛昭と江慈は長風塢に戻り、崔亮も後から到著し、街で購入した巾著袋を見せた。裴琰は江慈を迎えに出て、彼女に外套を渡した。二人が一緒に部屋に入るのを見て、衛昭は複雑な気持ちになる。
裴琰は謝澈が衛昭をスパイとして送り込んだのではないかと疑い、江慈に芝居に協力してほしいと頼む。江慈は承諾した。衛昭は江慈が裴琰の部屋に泊まったと聞き、激怒し、易飛に燕喬霜姉妹の行方を引き続き捜索するよう命じる。裴子放は南霊の刺史・何振文と共謀して軍械を横流ししており、その結果、軍械が大幅に不足していた。何振文はやむを得ず、粗悪な軍械を製造し、それが慶康に送られてしまった。裴子放は何振文に、裴琰と衛昭に真相を突き止められないよう、早急に後始末をするよう促す。
何永林は父・何振文を門の前で待っていた。何振文は裴子放の家からこそこそと出てきて、何永林は父の不当な扱いに憤慨する。何振文は朝廷で強い力を持つ裴家を敵に回したくないと考えていた。彼は何永林に、飢民を隠しておくこと、そして裴琰と衛昭が明日、鋳造司を視察に来るため、決して粗相のないようにと念を押す。
翌朝、裴琰と衛昭は刺史の役所を訪れ、何振文と地元の役人たちが出迎えた。何振文は彼らを鋳造司に案内するが、衛昭は炉が破壊されたのは操作ミスによる火災ではなく、責任逃れであることを見抜く。何振文は恐れおののき、ひざまずいて謝罪した。衛昭と裴琰は鋳造司を見て回ったが、異常は見つからなかった。衛昭は、より深く状況を把握するため、表向きは遊山を楽しみながら、秘密裏に調査することを提案する。こうして、彼らの新たな隠密調査の旅が始まる所で、この話は終わる。
第12話の感想
第12話は、人間関係と陰謀が複雑に絡み合い、物語が大きく動いた回でした。裴琰の実家での宴のシーンでは、族長との対立や衛昭の介入など、緊迫した空気が流れ、それぞれのキャラクターの立場や思惑が浮き彫りになりました。江慈の機転と優しさ、そして彼女を巡る裴琰と衛昭の微妙な関係も印象的です。特に、江慈が粥に細工をするシーンは、彼女の賢さと大胆さが際立っていました。
後半は、軍械横流しの真相に迫る展開となり、何振文の焦りや裴子放との繋がりが明らかになりました。衛昭と裴琰の隠密調査が始まることで、今後の展開への期待が高まります。全体的に、登場人物たちの感情の揺れ動きや、陰謀の裏に隠された真実が少しずつ明らかになる過程が丁寧に描かれており、見応えのあるエピソードでした。次回の調査で何が明らかになるのか、非常に楽しみです。
つづく