ジアンとドンフンを、特にジアンの笑顔を、グァンイルは陰からずっと観察していた。ドンフンがビルの構造調査を手伝い、ジアンを家まで送る様子も、全てグァンイルの目から逃れなかった。
帰り道、ドンフンは建物の構造の話を通して、友人とのエピソードや人生観をジアンに語った。その独特な視点は、ジアンに新鮮な驚きを与えた。
二人は別れ際まで話が尽きず、ジアンは少し歩いた後、何かを思い出したようにドンフンの元へ駆け戻り、「頑張って」と大きな声で叫んだ。一方、グァンイルはドンフンの尾行を続け、自宅を特定した。
ドンフンの誠実な人柄を知るドンウンたちは、彼を自分たちの派閥に引き入れようとしていた。しかし、ドンフンは派閥争いに関わらず、仕事に専念したいと考えており、その姿勢がドンウンたちの勧誘への決意をさらに固めさせた。
ユニは帰宅途中、公衆電話が撤去されているのを目にし、理由が分からずとも、心にわずかな動揺を感じた。
ユニはジュニョンからの電話を何度も無視し、不安になったジュニョンは、メッセージでユニを呼び出し続けた。
この日はドンフンの母の誕生日。家族全員が祝いのため集まり、家に入る直前、ユニは携帯の電源を切った。何も起こらないままだったが、ドンフンはユニの様子を静かに観察していた。
会社員のユニはドンフンの母から特別扱いを受け、何も手伝わずに済んだ。ギフンとサンフンの妻は少し不満そうだったが、場はおおむね和やかで楽しい雰囲気だった。ドンフンの息子からの国際電話での誕生日の祝福が、祝いの席を最高潮に盛り上げた。夕食後、三兄弟は母にそれぞれお金を渡し、母は一度は断ったものの、息子たちの孝心に負け、笑顔で受け取った。イヤホンでその様子を聞いていたジアンは、ドンフンの幸せを喜び、同時にそのような生活に憧れを抱いた。
帰宅後、ユニはドンフンの仮対を押し切り、残業を理由にジュニョンと会った。ドンフンは腹を立てながらも、一人で帰宅した。
ジュニョンは謝罪を繰り返したが、ユニは決して許さず、二人は不機嫌なまま別れた。
友人と酒を飲んでいたドンフンは、ジアンの「3万歳」という言葉について話した。友人は「嫌いを捨て、愛を分かち合う」という言葉でそれをうまくまとめた。ジアンは嫌悪に満ちた環境で生きており、愛の分かち合い方を知らない。他人と関わらないジアンは、そんな言葉を聞く機会もなく、この何気ない一言が彼女自身に気づきを与えたようだった。
友人たちが帰った後、ドンフンは一人で家路につき、家族のことを考え、深い苦悩に沈んだ。誰にも打ち明けられず、ドンフンはかがみこんで大きく息を吐き出し、まるで苦しみを吐き出そうとするかのように、呼吸を繰り返した。
気分の優れないユニは、食事もせずにベッドに横たわっていた。ドンフンは彼女のために夕食を買ってきたが、家の前で人とぶつかりそうになり、相手に怒鳴った。相手が謝罪すると、ジアンは聞き覚えのある声に気づき、翌日ドンフンが財布をなくしたことで、その人物がグァンイルだと確信した。
ジアンは警察に通報すると脅し、グァンイルにドンフンの財布を返させた。財布はドンフンが訪れた店に置かれ、店主からドンフンに連絡が入った。ドンフンはこの一件を全く知らなかった。
ドンウン派の強い推薦により、ドンフンは常務候補に選ばれた。社内サイトで発表されると、ドンフンの部下たちは歓喜したが、ドンフン本人は相変わらず控えめだった。
この知らせを見たジュニョンは、ユン常務に唆され、ドンフンが将来自分を踏み台にする前に、先に解雇しようと決意した。
第8話の感想
第8話は、ドンフンとジアン、そしてユニとジュニョンの対照的な人間関係が描かれ、それぞれの苦悩や葛藤が深まるエピソードでした。ドンフンとジアンの交流は、静かながらも心温まるものを感じさせます。ドンフンの人生観に触れ、ジアンの心に小さな変化が生まれているのが印象的でした。「頑張って」という一言は、ジアンの精一杯のエールであり、ドンフンに対する特別な感情の芽生えを感じさせます。一方、グァンイルの執拗な監視は、今後の展開に不穏な影を落としています。
ユニとジュニョンの関係は、もはや修復不可能なほどに壊れてしまっているように見えます。ジュニョンの謝罪もユニの心には届かず、二人の溝は深まるばかりです。ユニの苦悩は、見ている側も胸が締め付けられるほどです。また、ドンフンは家族の問題、会社の派閥争いなど、様々な重圧に苦しんでいます。一人で抱え込み、誰にも弱音を吐けないドンフンの姿は、現代社会における孤独な人間の象徴のようにも見えます。
ドンフンの母への家族の温かい愛情、そしてそれをイヤホンで聞いて羨ましそうにするジアンの姿も印象的でした。家族の温かさを知らないジアンにとって、ドンフン一家は憧れの存在なのでしょう。
つづく