満員電車の中、パク・ドンフンとイ・ジアンは近い距離に立っているものの、互いの心は遠く離れているようだった。ドンフンはジアンの最近の行動が気になり、ジアンもまたドンフンについて考えていた。電車のドアが閉まりかける寸前、ドンフンは慌てて下車するが、ジアンは考え事から覚めず乗り過ごしてしまう。次の駅で引き返したジアンと、スーパーの買い物袋を提げたドンフンは、駅の改札でばったり出会う。
一緒に帰る途中、ジアンは突然ドンフンに常務になるよう強く勧める。ジアンとト・ジュニョンはほとんど接点がないため、ドンフンはジアンがなぜ自分の昇進とジュニョンの失脚を望むのか理解できない。問いただすと、ジアンはただ「ドンフンさんがト・ジュニョンを嫌っているから」と答える。その言葉に動揺したドンフンは、「おじさんじゃなくて部長と呼べ」とぎこちなく言い返す。
夜、三兄弟は久しぶりに食事を共にする。パク・ギフンは兄と一緒に働き始め、大変ながらも以前のような自堕落な生活からは脱却していた。特に、以前のパートナーであるユラのギフンへの依存は、彼の仕事へのモチベーションを高めていた。兄弟たちの活気に満ちた様子を見て、ドンフンは喜びを感じていた。
一方、ジアンは祖母に、待遇の良い病院に転院できるという朗報を伝える。祖母は感激のあまり涙を流し、二人は抱き合って喜びを分かち合う。
食事の席で、酒が進むにつれ、パク・サンフンは以前話した話題、つまり「子供たちが幸せに暮らしていれば、自分が死んだ時にたくさんの人が葬式に来てくれる」という話を持ち出す。サンフンは感極まって涙ぐみ、ギフンにたしなめられる。
将来への不安を口にする兄弟たちに、ドンフンはついに自分が常務候補になったことを明かす。この知らせに、兄弟たちは大喜びで乾杯し、友人たちにも連絡して祝杯をあげる。周囲の人々から急に敬意を払われることに、ドンフンは居心地の悪さを感じる。母親からの電話を受け、期待を裏切るかもしれないという不安に駆られる。
カン・ユニは姑からの電話で、ドンフンだけでなく自分の体も大切にするように言われる。家族三人でいることが一番の幸せだという姑の言葉に、ユニは力なく携帯を握りしめる。
興奮しすぎたサンフンは、自分の葬式にたくさんの花輪が並んでいる様子を想像し、ドンフンとギフンにも無理やり見せる。この光景に、ドンフンとギフンも複雑な思いを抱く。ユラの登場で、サンフンはようやく現実に戻る。
宴会の後、ドンフンは再び孤独に襲われる。イヤホンからドンフンの苦しそうな息遣いが聞こえ、ジアンは慌てて彼を探しに出かける。ドンフンが無事アパートに入っていくのを見て、ジアンは安堵する。
一方、ユン常務はドンフンを解雇するための弱みを握ろうと、ジアンのことを調べ始める。従業員との会話から、ドンフンがジアンに特別な配慮をしていることを知る。
常務候補になったドンフンだが、仕事への姿勢は変わらず真面目だった。しかし、クァンイルからの電話で、ジアンが商品券を盗んだことを知る。
帰宅したドンフンは、いつものように家事をこなす。ユニは何も言わずに自分の部屋へ行く。ドンフンは自分のやり方で家族を思いやっているつもりだが、ユニの本当の気持ちには気づいていない。それが、ジュニョンがユニの心を掴んだ理由なのかもしれない。
ドンフンは会社の清掃員からジアンの生い立ちを聞き、彼女の過酷な人生を知って涙を流す。これまでジアンがかわいそうだと思っていたが、その境遇の深刻さを改めて知る。
ユニはジアンの履歴書を見つけ、彼女に問いただそうとする。しかし、ジアンの方からユニを訪ねてくる。ジアンはドンフンに睡眠薬を飲ませたことを認め、ジュニョンを軽蔑していることをはっきりと告げる。ジアンの態度に怒ったユニは金で解決しようとするが、ジアンはそれを拒否する。ユニに「無知で滑稽」と言われたジアンは、プライドを傷つけられ、「おばさん」呼ばわりした上で、ドンフンが全てを知っていることを明かす。その言葉に、ユニは驚きで言葉を失う。
20年近く喧嘩などしたことのないドンフンは、クァンイルを探し出し、激しい殴り合いになる。イヤホンでその様子を聞いていたジアンは、必死に現場へ向かう。しかし、クァンイルが殺人を犯したという言葉を耳にした瞬間、ジアンは立ちすくむ。自分が隠してきた秘密がついに暴かれてしまったことを悟る。
第9話 感想
第9話は、ドンフンとジアンの関係、そしてそれぞれの抱える苦悩がより深く描かれた、重苦しいながらも目が離せない展開でした。特に印象的なのは、地下鉄のシーンです。物理的には近い距離にいるのに、心の距離は遠く、互いの気持ちがすれ違っている様子が、満員電車という閉鎖的な空間の中で効果的に表現されていました。ジアンがドンフンに常務になるよう促すシーンも、彼女の真意がつかめず、謎が深まります。ドンフンへの好意なのか、それとも別の目的があるのか、今後の展開が気になります。
三兄弟のシーンは、これまでの重苦しい雰囲気とは打って変わって、温かい空気が流れていました。ギフンの立ち直りや、兄弟間の絆が感じられ、ドンフンにとって家族が大きな支えになっていることが改めて分かります。しかし、同時に将来への不安を抱えていることも明らかになり、ドンフンの常務候補という知らせが、彼らにとってどれほど大きな希望となっているかが伝わってきました。
一方、ユニとの関係は依然として冷え切っています。ドンフンは家族のために努力しているつもりですが、ユニの本当の気持ちに気づかず、すれ違いが続いています。ジュニョンという存在が、二人の関係をさらに悪化させていることも、見ていて辛いものがあります。
ジアンの過去が少しずつ明らかになり、彼女の境遇の過酷さが浮き彫りになりました。ドンフンが彼女の真実を知り、涙を流すシーンは、胸が締め付けられる思いでした。そして、ついにユニとジアンが直接対峙する場面は、緊張感に満ち溢れていました。ジアンの言葉は、ユニにとって大きな衝撃だったはずです。
つづく