ソウンは真実を知った瞬間、目の前が真っ闇になり、よろめいて倒れそうになった。ハソンはすかさず彼女を支えたが、ソウンは冷ややかな視線を彼に送るだけだった。ハソンの手から逃れるように外へ飛び出したソウンは、力なく門にもたれかかった。そこへチョ内官が挨拶に来たが、彼女はかろうじて返事をするのが精一杯で、すぐにその場を立ち去った。
チョ内官は部屋に入り、ハソンとソウンの様子から事の顛末を察した。ハソンに尋ね、真実を確認すると、すぐにイ・ギュに伝えるべきだと考えた。しかし、ハソンはまだソウンの冷たい視線のショックから立ち直れず、涙が止まらなかった。
イ・ギュは報告を受けると、すぐにソウンのもとへ行き、謝罪と共に全ての真実を打ち明けた。イ・ホンがすでに亡くなっていることを知ったソウンは、深い罪悪感と自責の念に苛まれた。夫の最期を看取ることができなかった自分を責めたのだ。イ・ギュは事態の重大さを説明し、ソウンに判断を委ねた。長い葛藤の末、ソウンは中殿を去り、自分の罪を償う道を選んだ。
朝廷では、大臣たちが明の使節が4日後に来訪することを報告していた。しかし、ハソンはソウンの冷たい視線のことで頭がいっぱいで、何も耳に入らなかった。ついに彼は声を上げて泣き出し、大臣たちの間に動揺が広がった。大妃もこの異変に気づき、真相究明に乗り出そうとした。
翌朝、アイヨンがソウンの著替えを手伝っていた時、ソウンは普段、出宮する時しか著ない服を選んだ。知らせを聞いたハソンは慌てて駆けつけ、ソウンを止めようとしたが、ソウンは相変わらず冷淡な表情だった。ハソンに止められることに苛立ちを覚えたソウンは、なぜ彼がいつも自分のそばにいるのか理解できなかった。彼女は、王がしてくれた感動的な出来事は全てハソンの仕業だったのかと尋ね、ハソンは否定しなかった。
ソウンが思わず口にしたイ・ホンの死の知らせに、ハソンは愕然とした。事態がこんな結末を迎えるとは想像もしていなかった。ソウンを止めることができないと悟ったハソンは、イ・ギュに望みを託した。しかし、イ・ギュの説得もソウンの決意を変えることはできなかった。イ・ギュは万策尽き、敬称を使わずにソウンの名前を呼び、国の母としての責任を担ってほしいと懇願した。しかし、ソウンは心を動かされることはなかった。
ソウンの出宮の知らせを聞いた大妃は、すぐにハソンを呼び出し、ソウンの不貞を理由に罰を与えようとした。しかし、ハソンは激しく仮論した。ハソンがソウンの出宮を許したことを知った大妃は、王のソウンへの深い愛情を理解し、仕方なく諦めた。
ソウンの固い決意に誰もが途方に暮れた。そして、ハソンが出宮してソウンを探すと宣言したことで、さらに混乱は深まった。明の使節の来訪が迫っているにもかかわらず、ハソンの決意は揺るがなかった。イ・ギュは仕方なく、3日間の猶予を与え、4日後には必ず戻るように命じた。ハソンの不在を隠蔽するため、イ・ギュはチョ内官に王の発狂を装うように指示した。チョ内官は部屋の中で機や椅子を叩き壊しながら、演技に熱中した。この騒ぎを聞きつけた後宮たちも、近づくのを諦めた。
しかし、大妃はこの騒ぎを無視して大殿に押し入った。突然の出来事にチョ内官は慌てふためいた。そこへイ・ギュが現れ、チョ内官を救ったが、同時に大妃に直接詰め寄られることになった。大妃はソウンとハソンの不在を理由に、イ・ギュに玉璽と兵符を渡すよう迫った。しかし、イ・ギュは断固として拒否した。計画が失敗に終わった大妃は激怒し、声を荒げた。しかし、イ・ギュは動じず、大妃の要求を突っぱねた。ついに大妃は怒りを収めきれずにその場を去った。
シン・ピョングンとチスは、この知らせを聞いて喜び、明の使節の来訪に乗じて王座を奪おうと企んだ。皆の予想通り、ソウンは父の流刑地を訪ねていた。しかし、門番の兵士は彼女を中に入れようとしなかった。途方に暮れるソウンの前に、朝廷の令牌を持ったチャン武官が現れ、彼女を助けた。チャン武官はハソンの護衛を任されており、ハソンはその様子を高台から見守っていた。
夜、ソウンは一人でベッドに横たわり、眠れずにいた。ハソンと過ごした日々を思い出し、胸が締め付けられた。そして、涙がこぼれた。翌朝、父のために朝食を用意したソウンは、一人で山頂へ向かった。崖から身を投げようとしたその時、ハソンが現れ、彼女を救った。
ハソンはソウンに自分を罰してほしいと懇願したが、ソウンはハソンの優しさに触れるほど、自分の罪の深さを痛感した。そして、自分の心にいるのはイ・ホンではなくハソンだと告白した。ハソンの心は深く揺さぶられた。彼はソウンに自分の本当の気持ちを伝え始めた…
第11話 感想
「王になった男」第11話は、真実が明らかになり、登場人物たちの運命が大きく動き出す、非常に緊迫感のあるエピソードでした。ソウンがイ・ホンの死の真相を知り、深い悲しみと罪悪感に苛まれるシーンは、胸が締め付けられるようでした。彼女の冷たい視線と、そこから溢れ出る涙は、どれほどの苦悩を抱えているかを物語っています。ハソンはそんなソウンを支えようとしますが、彼の優しさは逆にソウンの苦しみを深めてしまうという、切ない状況が描かれています。
イ・ギュは、国の危機を回避するために、ソウンに国母としての責任を全うしてほしいと願いますが、ソウンの決意は固く、彼の説得も届きません。ハソンへの想いを自覚したソウンは、中殿の座を捨て、自分の罪を償う道を選びます。
一方、ハソンはソウンへの深い愛情から、彼女の後を追って宮廷を出て行きます。明の使節の来訪を控えたこの重大な局面で、王と王妃が不在という異常事態に、宮廷内は騒然となります。イ・ギュはハソンの不在を隠蔽しようと奔走しますが、大妃の追及は厳しく、彼の苦労は増すばかりです。
つづく