イ・ギュはチン・ピョングンに刃を突き立て、息絶えました。ハソンは駆け寄りますが、既に遅く、イ・ギュはハソンの腕の中で最期の言葉を遺します。イ・ギュは自分の遺体を城外に晒し、罪を償ったと民に示すよう望みますが、ハソンはそれを拒み、涙ながらにイ・ギュを「忠臣」と呼びます。イ・ギュは安堵の表情を浮かべ、静かに息を引き取りました。
宮門では、チスと瀕死のチン・ピョングンが兵に阻まれます。ハソンはこの機に、大妃にイ・ギュの葬儀のための半日の停戦を申し入れます。大妃は渋々承諾します。イ・ギュの棺を見つめるハソンは、共に過ごした日々を思い出し、深い悲しみに暮れます。
ウンシムはイ・ギュの死を知り、悲嘆に暮れます。静かな場所で共に暮らすことを夢見ていましたが、その夢は葉わぬものとなりました。ウンシムは残酷な現実に打ちひしがれます。
一方、チン・ピョングンは容態が悪化していきます。見舞いに来た大妃に、倒れていないと示そうとしますが、大妃がヨンファグンを王位に就けるために自分の兵を利用するつもりだと知り、生きる望みを失います。
チスは兵を懐柔しようとしますが、大妃は満足しません。チスはハソンを討つことを提案し、大妃は賛同します。しかし、ハソンの策略にはまり、チスたちは孤立無援の状態に陥ります。チスはハソンに命乞いをし、大妃と仮逆者の首を持ってくると誓いますが、聞き入れられず、命を落とします。ハソンは初めて人を殺めましたが、イ・ギュの仇を討てたことに後悔はありません。
援軍を待つ中、後金が国境を侵犯しようとしているとの知らせが届きます。王位を守るべきだという臣下の進言を退け、ハソンは民の安全を優先し、王位を捨てて国境へ向かうことを決意します。
チスとチン・ピョングンの後始末を終えたハソンは、最後の仕上げにかかります。チン・ピョングンの部下を使い、ハソンを捕らえたという偽の情報を流し、大妃を大殿におびき寄せます。まんまと騙された大妃は、ヨンファグンと共に意気揚々と大殿へ。しかし、そこに待っていたのはハソンでした。大妃は仮乱の企てを全て語り、それが大殿の外にいる全ての官僚に聞かれていたとも知らず、勝ち誇ります。廃位と毒酒の沙汰を言い渡され、激昂する大妃。しかし、既に彼女の罪は明白であり、誰一人として味方する者はいません。最後は血を吐き、その波乱の人生に幕を閉じました。
政務に励んだハソンは、王位を譲る準備を始めます。自身の子孫ではなく、王族の中から後継者を選びます。ソウンに側室を迎えるよう勧められますが、ハソンは王位を譲った後は一介の民に戻るつもりだと告げます。感銘を受けたソウンは、大妃となり宮廷を離れられなくなる前に、庶民に降格させてほしいと願い、外でハソンを待つことを選びます。ハソンは譲位詔書に迷わず玉璽を押します。王としての最後の務めを果たし、国と民を守り抜いたことに、一片の後悔もありませんでした。
王宮を去るハソンを、チョ内官が見送ります。去りゆく後ろ姿を見つめ、共に宮廷を去りたいと申し出ますが、ハソンは既に彼のために穏やかな役職を用意していました。チョ内官は、宮廷に来たばかりのハソンが自分のために描いてくれた絵を思い出し、今度は自分がハソンの絵を描き、贈ります。ハソンの温かい人柄は、民にとっての大きな恵みでした。
第16話の感想
「王になった男」最終話、第16話は、張り詰めた緊張感と深い感動が入り混った、素晴らしい結末でした。イ・ギュの自己犠牲、ハソンの苦悩と決断、そして様々な登場人物たちの運命が、濃密なドラマとして描かれていました。
特に印象的だったのは、イ・ギュの最期です。愛するハソンを守るため、自らの命を投げ出す姿は、涙なしには見られませんでした。ハソンの腕の中で息を引き取るシーンは、二人の強い絆を感じさせ、深く胸を打たれました。
ハソンの成長も、この最終話の見どころの一つです。偽物から始まり、次第に真の王へと成長していく過程が丁寧に描かれてきましたが、最終話では、民のために王位を捨てるという、大きな決断を下します。その姿は、真に民を想う、立派な王としての風格を感じさせました。
大妃やチス、チン・ピョングンといった悪役たちの末路も、それぞれに印象的でした。特に大妃の最期は、自らの悪行によって破滅していく様子が、因果応報を感じさせました。
最終的に、ハソンが王位を譲り、民として生きる道を選ぶという結末は、意外ながらも、彼らしい選択だったと言えるでしょう。静かに宮廷を去るハソンの姿は、清々しささえ感じさせました。