イ・ギュは戻ってきたハソンに強い不満を抱いていた。特にハソンが政敵を倒す策を求めた時、イ・ギュは軽蔑を隠さなかった。剣をハソンの喉元に突きつけたが、目の前のハソンはもはや怯懦な男ではなく、怒りに燃える男へと変貌していた。一夜にしての変化にイ・ギュも驚きを隠せない。特に、イ・ホンの身代わりとなる危険も厭わないというハソンの言葉に、イ・ギュは彼の利用価値の高まりを感じた。

ハソンが涙ながらに、妹のタルレがシン・チスの息子、シン・イギョムに辱められたことを語ると、イ・ギュは事の重大さを悟った。シン・チスは権力をほしいままにしているが、現状では彼を完全に倒すことは難しい。衝動的な行動を防ぐため、イ・ギュはチョ内官にハソンを誰にも近づけないよう命じた。この決定にシン・チスとキム・サングンは緊張を隠せない。これまで薬でイ・ホンを操ってきたが、ハソンは薬を求めない。キム・サングンは自身の立場が危うくなると恐れた。

ケファンの死から、狡猾なシン・チスは王の命を狙う者が他に存在することに気づき、最も疑わしいのは先王の継妃、大妃だと考えた。

ハソンは、シン・チスがタルレを犬と同じ値段で買うために投げつけた二文銭を握りしめていた。イ・ホンの見舞いに行く途中、尾行に気づいたイ・ギュは妓楼へ行き、替え玉を使って追手を欺いた。危険を察知したウンシムは、甲守大伯に頼み、眠るタルレを連れて夜逃げした。翌日、イ・ギュはタルレを探させたが、ウンシムからは何も聞き出せなかった。イ・ギュはタルレを利用してハソンを操ろうとしていたのだ。

イ・ギュはハソンの目的をイ・ホンに話すと、嘲笑された。しかし、国丈以外にも王の命を狙う者がいると告げると、イ・ホンは発作を起こし、周囲に刺客がいると怯えた。イ・ギュには王としての威厳は全く感じられなかった。

イ・ギュはハソンを利用し、真の黒幕を暴こうと考えた。まずは大妃の宮殿で騒ぎを起こさせることにした。しかし、ソウンも大妃への挨拶のために宮殿前にいた。ソウンに気を遣いながらも、ハソンは計画通り大妃に無礼な態度を取り、機をひっくり返してソウンを連れて出て行った。大局を重んじるソウンはハソンの無礼さに失望したが、大妃のソウンへの非難が原因だと理解していた。目上の人には敬意を払うべきだと諭すソウンに、ハソンの怒りもようやく収まった。

ハソンの一件で動揺した大妃は、側近のチン・ピョングンを呼び対策を練った。チン・ピョングンは次の闇殺計画を企てた。

王の著替えの際、キム・サングンはシン・チスが謁見を求めていると伝えた。チョ内官が仮対するも、ハソンはシン・チスを招き入れた。危険を感じたチョ内官はイ・ギュの元へ走った。シン・チスは前国丈が任命した要職の役人を更迭するよう奏上した。官場の事情に疎いハソンも驚き、シン・チスが差し出した名簿を見て戸惑った。その時、イ・ギュが駆けつけた。名簿に目を通したイ・ギュは、朝議を経ずに人事を決めるのかとシン・チスを問い詰めた。シン・チスは人事を刷新するか、国丈を殺して国を安定させるべきだと主張した。イ・ギュは要求を受け入れた。

朝議で、この人事は周知の事実となり、要職を狙っていたチン・ピョングンは不満を抱き、シン・チスを睨みつけたが、シン・チスは無視した。

チン・ピョングンは狩りの計画について尋ねると、イ・ギュは中止しようとしたが、ハソンは承諾した。イ・ギュはハソンの失態を心配したが、ハソンの弓術は百発百中だった。チョ内官はハソンの身を案じ、狩りを中止するよう進言したが、その心配りがハソンの心を打った。

狩場で、ハソンはシン・イギョムの姿を見て我を忘れた。イ・ギュが注意するも、新たな波乱が待ち受けていた…

第3話 感想

「王になった男」第3話は、ハソンの怒りとイ・ギュの冷徹な策略が交錯する緊迫感溢れる展開でした。一夜にして別人のように変化したハソンの強い意誌と、妹のタルレへの深い愛情が、物語に新たな深みを与えています。これまで市井の男として生きてきた彼が、王の影武者として宮廷の陰謀に巻き込まれ、どのように立ち向かっていくのか、今後の展開が非常に気になります。

特に印象的だったのは、ハソンがシン・チスにタルレを侮辱された怒りを涙ながらに訴えるシーンです。彼の悲痛な叫びは、権力闘争の残酷さと人間の尊厳を問いかける、重みのあるものでした。一方で、イ・ギュは冷徹なまでにハソンを利用しようと画策し、その対比が物語の緊張感を高めています。

タルレを守るため、ウンシムと甲守大伯が協力して夜逃げを図るシーンも印象的でした。彼らの必死の行動は、権力者たちの思惑とは無縁の、市井の人々の温かさを感じさせます。また、イ・ギュが替え玉を使って追手を欺くシーンは、彼の知略の高さを改めて示すものでした。

シン・チスとチン・ピョングンの闇躍も、物語に不穏な影を落としています。彼らは互いに牽製し合いながらも、王の命を狙うという共通の目的のために闇闘を繰り広げています。彼らの策略がどのようにハソンとイ・ギュに影響を与えるのか、今後の展開が注目されます。

つづく