ハソンが驚愕の眼差しで見つめる中、イ・ギュは鋭い刃を自らの体に深く突き刺した。そして、冷徹な言葉がハソンの耳に響く。「役者ハソンは死んだ。今の貴様こそ、この国の王だ。」この言葉は雷鳴のようにハソンを襲い、彼は呆然と立ち尽くす。
イ・ギュは痛みをこらえ、意識が朦朧とするハソンを宮殿へ連れ帰る。真実を隠蔽するため、王は重い風邪をひいたと偽り、誰も面会できないようにした。床に伏せるハソンの意識は徐々に薄れていく。イ・ギュは傍らで静かに彼を見守りながら、同じく昏睡状態にあるイ・ホンを思い出す。イ・ホンの病状は長引き、いつ目覚めるかは未だ不明だ。しかし、真の国力の増強を実現するため、イ・ギュはハソンを王位に就かせるという危険な賭けに出ることを決意した。
ハソンが目を覚ますと、イ・ギュは黙って水を差し出すだけだった。ハソンの胸に去来する疑問や戸惑いには、多くを語らない。ただ、イ・ホンがかつて重傷を負ったことに触れ、ハソンをより完璧な王に鍛え上げたいと淡々と告げる。一方、チョ内官は外で侍医やキム尚宮の面会を全て遮断していたが、チスは諦めようとしない。彼は大臣たちを引き連れ、殿の外で騒ぎ立てる。ソウンが現れ説得するまで、彼らはなかなか立ち去ろうとしなかった。
ソウンはハソンに滋養のある薬湯を用意し、静かに彼の傍らに座る。その姿は淑やかで優しい。ソウンを見つめるハソンの脳裏には、かつて彼女が朗らかに笑う情景が浮かぶ。その笑顔は温かい太陽の光のように、彼の心を捉えて離さない。
その時、大妃が突然面会を求めてきた。ハソンのやや赤い頬を見た大妃は、すぐに慈母のような振る舞いを見せ、彼の体調を気遣う言葉をかけた。しかし、ソウンの姿を見ると、容赦なく彼女を叱責した。ソウンは礼儀正しく自分の失態を認めるも、若い妃を利用して王を惑わし、王の健康を損なうようなことは二度と許さないと毅然とした態度を示す。この言葉は彼女の偽らざる本心だった。今の王は彼女の心の中で非常に重要な存在であり、以前のように他の女性と喜んで分かち合うことなど、もはやできないのだ。
ハソンを落ち著かせた後、ソウンは付きっきりで彼の傍にいた。彼女はふと、ハソンに本を読んで聞かせようと考える。しかし、本を手に取ると、それは白話で注釈が付けられた詩経だった。とっさにハソンは、民衆は皆このように本を読んでいるのだと嘘をつく。ソウンはそれを聞き、今の王はなんと民に寄り添っているのかと深く感動し、喜びを隠せない。
ソウンは王が誰にも会わないための最良の盾となり、殿の外で一人待つチョ内官は、あの日ハソンがソウンを見つめていたうっとりとした眼差しを思い出し、密かに不安を抱く。
ソウンとの他愛ない会話の中で、ハソンは偶然、イ・ホンがソウンのためにしたことで、彼女が今でも喜んでいる出来事について耳にする。この話を聞き、ハソンの心には言いようのない切なさが広がる。一方、ソウンもまたハソンに深い恋心を抱き始めていた。
王の真意を掴みかねるチスは、イ・ギュに協力を持ちかける。しかし、イ・ギュはチスに官職を辞することを条件として提示する。この提案にチスは耳を貸さず、二人の交渉は物別れに終わる。
ソウンはハソンに、朝廷から救済米を民に支給するよう進言する。ハソンはそれが民衆を救うためだと聞くと、躊躇なく承諾する。しかし、この考えにチスは強く仮対する。彼は依然として王のために宮殿を修繕すべきだという理由を主張し、この提案を拒否した。最終的に、チスはこの問題を解決するために、民衆への増税を提案する。
財政担当の役人に事情を尋ねる中で、ハソンは「納貢」という言葉を耳にする。この言葉は、かつてキファンから聞いた話を思い出させる。キファンへの償いのため、ハソンは以前の法令を復活させようとイ・ギュの協力を得る。しかし、彼らは土地を持つ役人たちの仮対に遭うだけでなく、税を公平に計算できる特別な人物が必要となる。そこで、チュ・ホジェクという男の名前が挙がる。
ホジェクは当時、小さな宿屋で数当て賭博に興じていた。彼は非常に頭が切れ、相手から大金を巻き上げていたため、追われる身となっていた。殺されそうになったその時、イ・ギュが率いる人々が彼を救う。しかし、ホジェクは朝廷に仕えることに全く興味を示さない。仕方なく、イ・ギュは彼を捕らえるよう命じる。
ホジェクを連れてハソンに謁見させても、彼は依然として仕官を拒否する。彼の考えを見抜いたハソンは、賭けで勝負を決めることを提案する。傍らのイ・ギュとチョ内官は、ホジェクが何度も負けを認める様子に不思議がる。しかし、ハソンの「秘訣」――服の中から大量の札を落とすのを見た時、ようやく合点がいった。
山積みの奏折に、ハソンは頭を抱える。王であることは想像以上に難しいと嘆く。傍らで付きっきりで俗語を使って説明していたチョ内官も、疲れ切った様子を見せている。ハソンの配慮でチョ内官は休息のため退出する。
その時、ハソンに薬を届けに来たソウンがそっと入ってくる。ハソンは振り返らず、チョ内官が戻ってきたと思い込む。彼はうつむいたまま奏折を見ながら歩き、危うくソウンにぶつかりそうになる。幸いにも、彼は間一髪で…
第5話の感想
第5話は、ハソンが偽りの王として歩み始める重要な転換点であり、同時に様々な感情が交錯する濃密なエピソードでした。イ・ギュの冷徹な決断と、ハソンの戸惑い、そしてソウンへの芽生える恋心。それぞれの想いが複雑に絡み合い、物語に深みを与えています。
特に印象的なのは、ハソンとソウンの交流です。偽りの王でありながら、民衆を思いやるハソンの姿にソウンは心惹かれ、ハソンもまた、ソウンの優しさに触れ、イ・ホンとは異なる感情を抱き始めます。二人の間に流れる温かい空気は、宮廷の緊張感とは対照的で、見ているこちらも心が温かくなりました。
しかし、この穏やかな時間は長くは続かないでしょう。チスの野心、イ・ホンの病状、そしてハソンの偽りの身分。これらの要素が今後どのように絡み合い、物語を動かしていくのか、目が離せません。
つづく