チョ武官はハソンの首を取るよう命じられ、穴の中を探したがハソンの姿はどこにも見当たらない。訝しんで覗き込んだその時、ハソンはチョ武官の手を借りて穴から這い上がった。チョ武官の刀を奪ったが、心優しいハソンは彼を傷つけることなく、刀を穴に投げ捨てた。

ハソンに悪意がないと悟ったチョ武官は、イ・ホンの意向を伝え、遠くへ逃げるよう忠告した。しかし、ハソンは宮中のソウンを忘れられず、命を懸けても宮殿に戻ろうと決意した。

一方、イ・ギュはイ・ホンから渡された手紙の内容に戸惑っていた。イ・ホンの冷酷さを思い出しながら手紙を開くと、そこにはソウンを廃位し毒殺するよう命じる内容が記されていた。困惑するイ・ギュは、どうすべきか悩んだ。

同じ頃、ソウンの宮でイ・ホンはソウンと床を共にしようとしていたが、異様な物音を聞き、錯乱状態に陥って飛び出した。大殿でイ・ホンの狂乱を目にしたイ・ギュは、忠誠を誓い、イ・ホンから託された手紙を燃やした。

国と自身の野望のため、イ・ギュは地獄に堕ちる覚悟で、大妃殿の禁閉を命じた。大妃と宗親たちの仮乱を恐れたためだ。チョ内官はハソンを連れ戻すことを提案したが、イ・ギュはハソンが死んだと思い込んでいた。チョ武官から真相を聞くと、一同は安堵した。

宮殿に戻ったハソンは、様々な思いを抱いていた。イ・ギュは、ハソンが大切な人を守るために力が必要だと語るのを聞き、その誠心に触れた。そして、王の使命は愛する人だけでなく、国と民を守るため命を捧げることだと諭した。

危険を承知しながらも、ハソンはイ・ギュの頼みを受け入れた。イ・ギュの指示で、チョンセンは車の中に隠れていたイ・ホンを連れ出した。イ・ホンの身を案じるチャン武官は同行を申し出たが、イ・ギュは止めなかった。

ハソンはチョ内官からソウンの昨晩の様子を聞き、事の真相を知って食事ものどを通らなくなった。ソウンを人気のない場所に連れ出し、抱きしめた。その温もりに、ソウンの心は溶けていった。

イ・ホンがこれまでの全てを覆したことを知り、ハソンは悔やんだ。しかし、王の威信に関わるため、覆すわけにはいかない。ハソンとイ・ギュは、チス派の官吏たちに名ばかりの官職を与え、実権を奪う名昇闇降の策を講じた。チスもこれに仮論できなかった。

その状況を見て、彼らに弁護しようとした官吏は、ハソンによって降格された。かつてチスに取り入り、ハソンたちに芸を披露させた男が、王の顔がその時の役者に価ていることに気づき、チスに密告した。

チスは王の変化を思い返し、男の言葉を疑い始めた。一方、イ・ホンの世話をしていたチャン武官は、イ・ホンの目覚めに喜んだ。しかし、王命を果たせなかったことで、イ・ホンはチャン武官を罰しようとした。失望したチャン武官は、ただ跪くだけだった。

イ・ギュが現れ、チャン武官を救った。今日がイ・ホンの誕生日だと聞くと、イ・ホンはようやくチャン武官を許した。自分の誕生日に母が亡くなったことを思い出し、イ・ホンは悲しみに暮れた。先王は妃の死をイ・ホンのせいだとし、彼を冷遇し、「父上」と呼ぶことすら禁じた。そんな抑圧的な環境が、今のイ・ホンの性格を形成したのだ。

イ・ホンと食事をしながら、宮殿に戻れば再び血の雨が降るとイ・ホンが語るのを聞き、イ・ギュは眉をひそめた。イ・ホンを二人でよく訪れた海辺に連れて行き、誕生酒を勧めた。しかし、イ・ホンは酒を飲むと血を吐き倒れた。イ・ホンは、恐れていたことが現実になったと悟った。イ・ギュを裏切り者だと責めたが、イ・ギュは国と民のためだと主張し、良心に恥じることはないと答えた。

イ・ホンが息を引き取る様子を見ながら、イ・ギュは涙を流した。しかし、国と民のために地獄に堕ちる覚悟は変わらなかった。そして、ハソンとソウンの愛の物語は、この宮廷闘争の中で、困難な道のりを歩み続けるのだった。

第8話の感想

「王になった男」第8話は、緊迫感と感動が入り混じる、息詰まる展開でした。ハソンのソウンへの深い愛情、イ・ギュの苦悩と決断、そしてイ・ホンの悲劇的な運命が、複雑に絡み合い、物語をさらに深いものへと昇華させています。

特に印象的だったのは、ハソンの揺るぎない愛です。命の危険を顧みず、愛するソウンのために宮殿に戻る姿は、真の愛の強さを示していると言えるでしょう。チョ武官とのやり取りに見られる彼の優しさも、彼の魅力をさらに引き立てています。

一方、イ・ギュは国の安定と民の幸福のために、苦渋の決断を迫られます。イ・ホンを毒殺するという選択は、彼にとってどれほどの葛藤を伴うものだったでしょうか。その苦悩と責任感、そして国への忠誠心は、視聴者の心を強く揺さぶります。

イ・ホンの最期は、悲劇的ながらも、彼の人生を象徴するものでした。愛を知らず、孤独の中で育った彼は、歪んだ愛情表現しかできませんでした。最期にイ・ギュに問いかけた言葉は、彼の心の叫びであり、救いを求める声だったのかもしれません。

つづく