2004年、チェ・イルファンは国家情報院でミン次長と面会した。剣道の腕前と軍隊経験を買われ、3年前からスカウトされていたのだ。ミン次長はチェ・イルファンに誌望動機を尋ねる。チェ・イルファンは、8年前に軍隊で北朝鮮工作員の追跡中にチョ・レヒョク係長に助けられた経験を語り、北からの脅威を排除したいと答えた。しかし、型通りの返答に納得しないミン次長は、真意を問いただす。チェ・イルファンは、当時、目の前で仲間が命を落とす中、自身は無力だったこと、そして黒衣要員に救われたことを明かし、彼らのような英雄になりたいと語った。
ミン次長は黒衣要員の任務の特殊性、すなわち国家のために尽くす一方で、その存在は常に秘密裏にされ、家族にも明かせないことを強調する。チェ・イルファンは覚悟を示し、任務を引き受けた。彼に与えられたのは、潜在的な超能力者を探し出し、国家のために育成するという重大な任務だった。ミン次長は、冷静かつ客観的に任務を遂行し、個人的な感情に左右されないよう忠告した。
こうして黒衣要員となったチェ・イルファンは、表向きは旌元中学校の教師として、チョ・レヒョクを上司に任務を遂行することになった。最初の育成対象はチョン・ゲドだった。チェ・イルファンはチョン・ゲドに多くの時間を費やしたが、超能力は発現しなかった。チョ・レヒョクは、他の生徒にチョン・ゲドをいじめるよう仕向け、極限状態での発現を試みるも失敗に終わる。結局、チェ・イルファンはチョン・ゲドを不適合と判断し、俳優への転向を勧めた。これが後の「電光石火」誕生のきっかけとなる。
次にチェ・イルファンが見出したのは、透視能力を持つヤン・セウンだった。大きな期待を寄せていたが、訓練中にヤン・セウンは倒れ、そのまま帰らぬ人となった。実は彼女は癌を患っていたのだが、チェ・イルファンはそれを知らず、高強度の訓練をさせてしまったのだ。この出来事はチェ・イルファンに大きなショックを与え、任務の意義に疑問を抱き始める。幾度か報告書を提出するも、仮応は芳しくなく、チェ・イルファンは次第に意欲を失っていった。
そんなチェ・イルファンを鼓舞するため、チョ・レヒョクは黒衣要員であるユン・ソンウクを派遣し、チェ・イルファンに教師という役割はあくまで仮の姿であり、真の目的は超能力者の育成であることを改めて諭した。程なくしてキム・ボンソクとチャン・ヒスが旌元中学校に転入してきた。チェ・イルファンは彼らの家庭背景を調べ、真の超能力者候補と判断し、二人に注目する。
イ・ミヒョンは、チェ・イルファンが自分の名前を知っていたこと、そして教室内の監視カメラに気づき、学校に秘密があると察知する。教室を出ようとした時、チャン・ジュウォンが入ってきた。イ・ミヒョンはチャン・ジュウォンにカメラの存在を警告し、教室を後にした。そしてイヤホンでチェ・イルファンとチャン・ジュウォンの会話を盗聴する。一方、清掃員が校長室に現れ、ユン・ソンウクは追い払おうとするが、逆に刺殺されてしまう。清掃員はユン・ソンウクに成り代わり、監視システムを掌握した。
鋭い感覚を持つイ・ミヒョンは校長室の異変に気づき、現場に向かう。そこには清掃員がいたが、イ・ミヒョンはその不審な点に気づく。同時に、北朝鮮工作員が学校の通用口に到著。一人の超能力者が難なく鍵を破壊し、侵入に成功する。
第16話の感想
第16話は、チェ・イルファンの過去に焦点を当て、彼が黒衣要員になった経緯や、任務への葛藤、そして挫折が丁寧に描かれていました。一見冷徹に見える彼にも、仲間を失った過去や、育成した生徒の死といった深い心の傷を抱えていることが分かり、人間味を感じました。特に、ヤン・セウンの死は彼にとって大きな転機となり、任務への情熱を失いかけている様子が痛々しかったです。
理想に燃えて黒衣要員になったものの、現実の厳しさに直面し、苦悩するチェ・イルファンの姿は、私たちにも共感できる部分があるのではないでしょうか。組織の論理と個人の感情の狭間で揺れ動く彼の心情は、今後の展開にも大きく影響を与えそうです。
また、チョン・ゲドとのエピソードは、後の「電光石火」誕生のきっかけが明かされ、意外な繋がりを感じさせました。一見何気ない出来事が、後の大きな展開に繋がっていくという巧妙な構成に感嘆しました。
つづく