ヒスはボンソクに自分の過去を語った。母親は交通事故で亡くなり、ヒスは母親が自分から離れるように言ったことだけを覚えている。その後、父親と共に各地を転々とし、定住することなく、トラックがまるで家のような生活を送っていた。ヒスが成長するにつれ、チャン・ジュウォンは鉱山で仕事を見つけ、小さな家を購入し、親子二人やっと落ち著ける場所を手に入れた。

ヒスの高校では深刻ないじめが横行していた。転校生のシン・ヘウォンはクラスのボス格に目をつけられ、新しいイヤホンを奪われ、新しい服も著替えさせられた。正義感の強いヒスは我慢できず、先生に相談する。先生は事態を重く見ると言ったものの、クラスでいじめを受けているか尋ねても誰も名乗り出なかった。その後、先生は普段騒がしい女子生徒たちを呼び出して注意するが、ボス格の怒りに火を注ぐ結果となった。ボスは教室に戻ると告げ口をした人物を探し出し、班長が止めに入ると、ボスの彼氏が班長を暴行した。

放課後、ヒスは班長に何故先生に言わなかったのかと尋ねる。班長は言っても解決しないどころか、事態が悪化すると考え、告げ口をした人物を恨んでいた。ヒスは班長に申し訳なく思い、ボスが再びヘウォンをいじめているのを見て、怒りが爆発し、自ら行動を起こすことを決意する。ボスとその仲間を校庭に呼び出し、激しい乱闘が始まる。ヒスは多勢に無勢で何度も攻撃されるが、ひるむことなく仮撃する。ナイフで顔を切られ、棒で殴られて骨折するも、驚異的な生命力で1対17の戦いを製し、全員を倒した。シン・ヘウォンは窓からその一部始終を目撃していた。

チャン・ジュウォンは事情を知るとすぐに後始末に奔走する。家を売却し、各家庭に謝罪と多額の示談金を支払うことで、ヒスは難を逃れたが、転校を余儀なくされた。父親はヒスを責めることはなく、強い身体は自分譲り、正義感は母親譲りだと告げた。

チャン・ジュウォンはカード決済機を持って昨日の配達先の店に行き、代金を回収しようとする。店主はまだ言い訳をしていたが、チャン・ジュウォンは彼の訛りがソウルではなく江原道の方言だと気づき、強気に出る。すると店主は急に態度を変え、素直にカード決済に応じた。警察がエンジェル美容室殺人事件を捜査しに来る。イ・ミヒョンはそのニュースを見て現場に駆けつけ、バイクで去っていくチャン・ジュウォンの後ろ姿を見かけ、既視感を覚える。

ミン次官の部下は、調査の結果、アメリカのCIAの掃除屋による犯行だと判断したと報告する。かつて要員が外勤任務を遂行する際、CIAの許可を得ていたことから、影響を排除するための闇殺だと推測される。部下は在韓米国大使館の参事官を呼び出して面談すべきかと尋ねるが、ミン次官はまだその時ではないと判断する。

フランクは美容室のママの葬儀に参列し、子供たちの情報を集めようとするが、娘は十数年前に亡くなったと知り、それ以上追求しなかった。一方、チョン・ゲドは父親であり、地下書店の店主でもある人物の葬儀に参列する。一年で二人の肉親を失い、運命の不条理に落胆するも、どうすることもできない。

クラスに転校生がやってくる。ヒスが驚いたことに、その転校生はシン・ヘウォンだった。ヘウォンはヒスを見て微笑む。彼女はヒスのために転校してきたのだ。

第5話 感想

『ムービング』第5話は、ヒスの壮絶な過去と驚異的な能力、そして彼女を取り巻く人々の複雑な事情が明らかになる、非常に重厚なエピソードでした。母親の死、転々とする生活、そして学校でのいじめ。ヒスが背負ってきた苦難は想像を絶するものです。それでも彼女は正義感を胸に、弱者を助けようとする勇気を持っています。1対17という圧倒的な不利な状況でも怯むことなく立ち向かう姿は、まさに圧巻でした。

特に印象的だったのは、ヒスがいじめっ子たちを倒した後、父親が彼女を責めることなく、その強さと正義感を肯定するシーンです。父親の深い愛情と理解が、ヒスの心を支えていることが感じられ、胸を打たれました。また、エンジェル美容室殺人事件の捜査や、フランク、チョン・ゲドの動向など、他の登場人物たちのストーリーも同時進行で描かれており、今後の展開への期待感が高まります。

つづく